- 広告の成果が出ないとき、どこから見直すか広告アカウントより先に、問い合わせから受注・失注までの追客工程を見る。広告を見る人と追客する人が分かれ、その間の数字を誰も追っていないことが多い(FIG.01・FIG.02)。
- 問い合わせが来たら、誰がいつまでに何をするか問い合わせの種別ごとに、初回応答の期限と担当、自動にしてよい連絡と人が書く連絡を決めておく(FIG.03)。
- 追客が回っているかを、どう確かめるか反応速度・対応品質・記録状況の3点を、週に1回、同じ様式で点検する。まず1週間、手で記録するところから始める(FIG.04)。
広告の成果は、問い合わせの「後」の3工程で決まる。広告で見える数字は、導線の最初の2工程までしか映さない
左から右へ(スマートフォンでは上から下へ)。05で失注したリードは、一定期間後に04の商談へ戻す
- 広告接触広告を見て、クリックしてサイトへ来る。CPA・CTRなど広告の数字で見える広告運用(外部代理店など)
- 問い合わせフォーム・電話などで一次連絡が届く。件数までは広告の数字で見える広告運用・社内の受付
- 初回応答決めた時間内に一次返信する。誰がいつ返信したかを記録する社内の営業・事務
- 商談提案後、決めた日数以内に次のアクションを入れる。フォローは人が書く社内の営業
- 受注・失注受注・失注の結果と、失注理由を記録する。失注は「終わり」にしない社内の営業・経営者
失注したリードは、3〜6ヶ月後の再アプローチで04の商談に戻す
- 広告のCPAが悪いと言われる案件の8割は、広告ではなく追客フローに原因がある
- 初回返信は遅れるほど商談化率が下がり、24時間でおよそ半減する。狙うべきは「即時〜数時間以内」
- 「広告を見直す前に、追客の数字を1週間だけ取る」を最初の一歩にする
1. 「広告の効果が出ない」という相談の正体
地場産業の経営者から「広告に月50万円かけているのに、成約が増えない」という相談を受ける機会が、ここ2年で増えました。広告アカウントを見ると、たしかにCPAは高い。CTRも平均より低い。広告クリエイティブを刷新する提案も、ターゲティングを絞る提案も、媒体を変える提案もできます。
でも、現場でデータを並べてみると、ほぼ毎回、広告以外の場所に本当の論点があります。問い合わせは月100件来ているのに、社員が返信できているのは40件。残り60件は1週間以上放置されている。商談化したリードのうち、再アプローチの仕組みがなく、提案後にフォローが止まっている。こういう状態で広告だけ改善しても、リードは増えるが売上は伸びません。
2. その問題が起きる構造
原因は、広告の運用と、追客の運用が、別の人・別の責任範囲になっていることです。広告は外部代理店が見ています。問い合わせ後は、社内の営業や事務担当者が個別対応しています。両者の数字をつなぐ責任者がいない。月次会議で、広告のCPAは報告されますが、「問い合わせから何時間後に返信したか」「商談化率はいくつか」「失注理由は何か」は、誰も追っていません。
地場産業に多いのは、問い合わせフォームから来た一次連絡が、社員のメール受信箱に届くだけで、誰がいつ返信したかを記録する仕組みがない状態です。社員が忙しい時期は、結果的に返信遅れが連発します。広告の数字は外部に見えるのに、追客の数字は社内ですら見えない——この非対称が、改善の力点を間違わせます(FIG.02)。
CPAに映るのは問い合わせまで。失注の多くは、誰の報告にも載らない追客工程で起きている
行が工程。右の列に、記録がないと見落とされる失注の起き方を示す
| 工程 | 見ている人 | 月次会議に出る数字 | 記録がないと起きる失注 |
|---|---|---|---|
| 広告接触 | 外部代理店 | CPA・CTR・クリック数 | ─ |
| 問い合わせ | 外部代理店・受付 | 問い合わせ件数(CV数) | ─ |
| 初回応答 | 社内の営業・事務 | 出ていないことが多い | メール受信箱に届いたまま、誰も返信しない。返信が遅れ、その間に他社へ流れる |
| 商談・提案後 | 社内の営業 | 出ていないことが多い | 提案後のフォローが止まり、検討が立ち消えになる |
| 失注後 | 誰も見ていない | 出ていないことが多い | 失注理由が残らず、再アプローチもない。検討が再開した時期の問い合わせを取り逃す |
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3. 経営者が判断すべき論点
広告予算を増やすか減らすかを決める前に、確認すべきは次の3つです。
- 過去30日に問い合わせから24時間以内に返信できた件数の割合は何%か
- 商談化したリードに対して、提案後3日以内に次のアクションが入っている割合は何%か
- 失注したリードに対して、3〜6ヶ月後の再アプローチが運用に組み込まれているか
この3つの数字が即答できない場合、広告アカウントを開く前にやるべき仕事があります。広告は、追客の蛇口が開いていて初めて意味を持つ。蛇口が閉じている状態で水を増やしても、地面が濡れるだけです。
4. 現場で実行するための具体策
追客フローの整備は、ツール導入から入らないことが鉄則です。順番が逆になると、また「ツールを入れたのに現場で使われない」状態を作ります。
011週間、追客の数字を取るだけ
最初の1週間は、ツール導入をせず、問い合わせ件数・初回返信までの時間・商談化件数・失注理由をスプレッドシートに手で記録します。担当者にやってもらうのが理想ですが、それが難しければ経営者自身が記録します。1週間で十分、問題箇所が見えてきます。
02初回返信のSLAを決める
「問い合わせから何時間以内に一次返信するか」を決めて、社内ルールにします。営業時間内なら2時間以内、営業時間外なら翌朝9時までに返信、というレベル感。商談化率は初回返信の遅れとともに連続的に落ち、24時間を過ぎる頃にはおよそ半分まで下がります。「24時間以内」はすでに大きく落ちた地点なので、本当に狙うのは即時〜数時間以内です。SLAを決めない限り、現場の善意では維持できません。種別ごとの期限と担当の置き方は FIG.03 のとおりです。
問い合わせの種別ごとに、初回応答の期限と担当を先に決めておく。自動にしてよいのは到達確認まで
行が問い合わせの種別。●が責任を持つ人(色付きの●は、期限を落とすと失注に直結する工程の責任者)、○が関与する人。右端の列が、自動送信にしてよい範囲
| 問い合わせの種別 | 初回応答の期限 | 受付・記録 | 営業 | 経営者 | 自動にしてよい範囲 |
|---|---|---|---|---|---|
| 見積もり・導入の相談(営業時間内) | 2時間以内に一次返信 | ○ | ● | ─ | 到達確認のみ。一次返信は人が書く |
| 営業時間外の問い合わせ | 翌朝9時までに一次返信 | ● | ○ | ─ | 受付の自動返信(翌営業日に連絡する旨) |
| 資料請求・情報収集 | 2時間以内に一次返信 | ● | ○ | ─ | 資料送付と到達確認 |
| 提案済みの商談 | 提案後3日以内に次のアクション | ─ | ● | ○ | なし。フォローは人が書く |
| 失注したリード | 3〜6ヶ月後に再アプローチ | ○ | ● | ─ | 再連絡日のリマインドと定型の再連絡文 |
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この表は分担の一例で、実績を示すものではありません。問い合わせの種別と期限は、自社の商材・体制に合わせて置き換えてください。
03追客テンプレートと自動化
初回返信文・提案後3日のフォロー文・失注後3ヶ月の再連絡文を、テンプレート化します。LINE公式やHubSpotなどのCRMで、自動送信できるパターンと、人が書くべきパターンを切り分けます。全自動化を目指さないのがコツです。一次返信は自動でいい。提案後のフォローは人が書くべきです。
04月次レビューで「追客側の数字」を必ず見る
月次マーケ会議のアジェンダに、広告のCPA・CV数だけでなく、初回返信時間・商談化率・失注後アプローチ件数を入れます。これだけで、3ヶ月後の改善議論が劇的に変わります。広告だけ見ていた会議が、ファネル全体を見る会議に変わります。
反応速度・対応品質・記録状況を、毎週同じ様式で点検する。空欄が埋まらない項目が、最初に直す場所
行が点検項目。毎週、今週と先週の欄を埋め、右の列に次の一手を書く
| 区分 | 点検項目 | 今週 | 先週 | 気づき・次の一手 |
|---|---|---|---|---|
| 反応速度 | 問い合わせ件数 | |||
| 決めた期限内に一次返信できた件数 | ||||
| 初回返信まで最も時間がかかった件と、その理由 | ||||
| 対応品質 | 商談化した件数 | |||
| 提案後、期限内に次のアクションが入った件数 | ||||
| 失注件数と、主な失注理由 | ||||
| 記録状況 | 返信者・返信日時が記録されていない件数 | |||
| 失注理由が空欄の件数 | ||||
| 再アプローチ日が決まっている失注リードの件数 |
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項目は本文の「1週間、追客の数字を取る」と「月次レビュー」の内容を週次の様式に並べたもので、目標値は含めていません。実績を示すものではありません。
5. 失敗しやすい落とし穴
- CRMやMAツールを先に入れてしまう。導入から3ヶ月経っても、現場が使い方を覚えられず、結局Excelに戻ります。1週間の手記録で問題箇所を特定してから、必要最小限のツールを選びます。
- 初回返信の自動化で安心してしまう。自動返信は到達確認にしかなりません。重要なのは、その後の人による次のアクションです。自動化が入った瞬間に「対応した気」になるリスクに注意します。
- 失注リードを「終わったリード」と扱う。地場産業の意思決定は、半年〜1年単位で動きます。3ヶ月後・6ヶ月後の再アプローチが運用に組み込まれていないと、競合に流れてからの問い合わせを毎回逃します。
明日から始める最初の一歩
- 過去30日の問い合わせを、受信箱から一覧にする問い合わせ日時と、最初に返信した日時を並べます。返信した人・日時が分からない件が多ければ、その時点で「記録がない」ことが分かります。
- 今日から1週間、FIG.04の様式で手で記録するツールは入れません。担当者が難しければ、経営者自身が記録します。
- 初回応答の期限と担当を、個人名で1行ずつ決めるFIG.03の表を、自社の問い合わせ種別で埋めます。決めた内容は、次の月次会議のアジェンダに「追客側の数字」として加えます。
6. eapとしてどう支援するか
eapが集客改善に入るとき、最初の2週間は広告アカウントを触りません。問い合わせから受注までの数字を、社内のメール履歴・CRM・営業日報から拾い集めることから始めます。多くの場合、ここで「広告の前に直すべき場所」が3〜5箇所見つかります。
その後、初回返信SLA、追客テンプレート、月次レビューのアジェンダを、運用に乗る形まで設計します。LINE公式の自動配信や、HubSpot等の導入が必要なら、Ruffnoteと連携して実装まで巻き取ります。広告運用は、この導線が整ってから着手するのが順序です。
広告は、最後に改善するもの。最初に見るべきは、問い合わせの後の対応です。