- リニューアルの契約前に、何を決めておくかデザインや制作費より先に、更新担当者(個人名)・承認フロー(経由する人数)・更新頻度(最低ライン)の3点を決める。
- 公開後の更新を、誰が何に責任を持つか更新担当・承認者・制作担当の3者で、起案から公開、見直しまでの責任を分ける(FIG.03)。
- 公開後、いつ何を点検するか公開90日後・180日後の振り返りを契約時点で予約し、公開前に決めた項目が守られているかを点検する(FIG.04)。
リニューアルは「公開」で終わらない。公開前の運用設計から、90日・180日の振り返りまでを一続きで設計する
左から右へ(スマートフォンでは上から下へ)。04の振り返りで見直した内容を03の更新に戻す
- リニューアル前担当者の指名 → 承認フローの図式化 → 更新頻度の数値化 → 制作会社・CMSの選定。選定は最後に行う経営者・更新担当
- 公開更新担当が実際にCMSを操作して迷わないかを、公開前に確認してから公開する制作担当・更新担当
- 更新更新カレンダーの最低ライン(お知らせ・支援事例など)を守る。承認待ちで止めない更新担当・承認者
- 振り返り公開90日後・180日後のレビュー。止まっていれば担当・フロー・頻度を見直す経営者・承認者・制作担当
振り返りで決め直した担当・フロー・頻度で、03の更新に戻る
- コーポレートサイトのリニューアル案件で最初に詰めるのは制作費とデザイン。更新フロー・記事追加プロセスの合意は契約書のどこにも明記されないことが多い
- 公開直後の1〜2ヶ月は更新が続くが、3〜6ヶ月後に「お知らせ」も「支援事例」も止まっている会社は珍しくない
- 更新担当者・承認フロー・更新頻度は、制作費の見積もりと同じタイミングで、契約前に決めておくべき論点
1. 「公開して終わり」が、半年後に見えてくる
「コーポレートサイトをリニューアルしたい」という相談を受けると、最初に出てくる論点はほぼ決まっています。デザインのテイスト、サイト構成、そして制作費の見積もりです。地場の建設・設備工事業のような中堅企業であれば、制作費の相場感はおよそ150万〜400万円台で、デザイン案の比較検討に数週間、構成案の議論にさらに数週間をかけるのが一般的です。
ただ、公開から半年後にサイトを見ると、状況が変わっています。「お知らせ」ページの最終更新日が公開日のまま。「支援事例」も、公開時に掲載した3〜4件から一件も増えていない。制作段階であれほど時間をかけて議論したサイトが、半年後には更新の止まった「置き物」になっている。珍しいケースではなく、リニューアル案件のかなりの割合で起きています。
2. その問題が起きる構造
原因は、制作費の交渉と同じ熱量で、公開後の更新フローが議論されていないことです。見積書や提案書に書かれるのは、ページ数・デザイン工数・CMSの種類までで、「誰が記事を書くか」「誰が承認するか」「月に何本更新するか」は、公開直前になって初めて話題に上がります。
このタイミングで決めようとすると、たいてい担当が宙に浮きます。制作を発注したのは経営者や広報担当者、記事を書けそうなのは営業担当者、承認するのは経営者——という具合に、更新に関わる人が3〜4人に分散し、誰か1人が欠けると更新が止まります。承認フローが決まっていなければ、原稿は「この内容で出していいか」を確認する相手が曖昧なまま止まり、そのまま忘れられます。
制作フェーズには進行管理者がいて、議論の場(定例会議)もあります。運用フェーズには、そのどちらもありません。ここに、公開後の放置が起きる構造があります。分かれ目は、契約前の一点です(FIG.02)。
「公開して終わる会社」と「更新が続く会社」は、契約前の一点で分かれる
上の問いから、左右どちらの経過をたどるかを見る(スマートフォンでは上下)
- 公開直前に「誰が書くか」「誰が承認するか」が初めて話題に上がる
- 更新に関わる人が3〜4人に分散し、1人欠けると止まる
- 原稿の確認相手が曖昧なまま止まり、忘れられる
- 見直しの場がなく、公開時の状態のまま置かれる
- 実際に書ける個人が、更新担当として指名されている
- 起案から公開までの経由者が決まっていて、少ない
- 最低限の更新頻度がカレンダーに入っている
- 90日・180日の振り返りで、止まった原因を見直せる
3. 経営者が判断すべき論点
リニューアルの契約前に、経営者が答えを持っておくべき論点は次の3つです。
- 更新担当者は誰か。役職ではなく、実際に手を動かせる個人名で決まっているか
- 承認フローは何人を経由するか。経由者が増えるほど、更新は止まりやすくなる
- 最低限の更新頻度(例:お知らせは月1本、支援事例は四半期1本)を、数値で決めているか
この3つは、制作会社やCMSを選ぶ前に決める論点です。決めないまま発注すると、公開後の運用は誰の担当にもならず、放置に向かいます。
3つの論点が決まったら、次は役割の分担です。「誰が書き、誰が承認し、誰が画面を直すか」を1枚にしておくと、担当者が替わっても引き継げます。
更新担当・承認者・制作担当の3者で、責任を持つ工程を分ける
行が工程、列が役割。●が責任を持つ人、○が関与する人
| 工程 | 更新担当 | 承認者 | 制作担当 |
|---|---|---|---|
| ネタ出し・原稿作成 | ● | ─ | ─ |
| 公開してよいかの承認 | ○ | ● | ─ |
| CMSへの入力・公開作業 | ● | ─ | ○ |
| 更新カレンダーの管理 | ● | ○ | ─ |
| テンプレート・画面の改修 | ○ | ─ | ● |
| 90日・180日の振り返りの招集 | ○ | ● | ○ |
表は横にスクロールできます
この表は分担の一例で、実績を示すものではありません。体制によっては更新担当と承認者を兼ねる場合もあります。
4. 現場で実行するための具体策
リニューアルを機能させている会社は、制作会社やCMSを選ぶ前に、運用の設計を終えています。多くの会社が最初にやる「制作会社・CMS選定」は、実は最後の工程です(FIG.01の「リニューアル前」)。順番は、担当者の指名 → 承認フローの図式化 → 更新頻度の数値化 → 制作会社・CMSの選定です。
01更新担当者を「実行できる個人」で指名する
「広報担当」ではなく、実際に月次で記事を書ける人物名で指名します。営業事務や現場の技術者など、日々の情報を持つ人を担当にすると、記事のネタが枯れにくくなります。
02承認フローを1枚のフローチャートにする
起案から公開までに何人を経由するかを、1枚の図にします。経由者は担当者→承認者の2人までに絞るのが、更新を止めない目安です。3人を超えると、誰かの確認待ちで止まる原稿が必ず出てきます。
03更新カレンダーの最低ラインを数値で決める
「お知らせは月1本」「支援事例は四半期1本」など、最低限守るべき頻度を契約時点でカレンダー化します。多く作る必要はなく、止めないことが目的です。
04制作会社・CMSを、運用フローに合わせて選ぶ
担当者・承認フロー・更新頻度が決まって初めて、制作会社やCMSの比較検討に入ります。「更新しやすいCMS」を選ぶ基準は、担当者が実際に使えるかどうかです。デザインの自由度だけで選ぶと、更新担当者が操作を覚えられず、結局制作会社への更新依頼が発生し続けます。
05公開90日後・180日後のレビューを、契約時点で予約する
制作会社との契約に、公開90日後・180日後のレビューミーティングを組み込みます。更新が止まっていれば、この場で担当・フローを見直します。予定が先にカレンダーに入っていれば、更新が止まっていることに気づく機会が必ず来ます。
公開前に「決める」項目と、公開後に「点検する」項目は対になっている
中央の列を契約前に埋め、右の列を90日・180日の振り返りで確認する
| 項目 | 公開前に決めること | 公開後に点検すること |
|---|---|---|
| 更新担当 | 実際に書ける個人を、名前で指名する | その人が今も担当しているか。異動・退職で空いていないか |
| 承認フロー | 起案から公開までの経由者と順番を1枚の図にする | 承認待ちで止まっている原稿がないか |
| 更新頻度 | お知らせ・支援事例などの最低ラインを数値で決める | 各ページの最終更新日が、最低ラインを守れているか |
| CMSの操作 | 更新担当が自分で操作できるものを選ぶ | 制作会社への更新依頼が、日常的に発生していないか |
| 更新代行の範囲 | 代行する作業と、社内でやる作業の線を引く | 代行費用に見合う更新が実際に行われているか |
表は横にスクロールできます
5. 失敗しやすい落とし穴
- 「更新は誰でもできます」という触れ込みのCMSを選ぶだけで安心する。触れる人はいても、書く人・承認する人が決まっていなければ動きません。
- 制作会社に「更新代行」を丸投げし、月額費用だけ発生させる。代行費用は発生し続けるのに、実際の更新は数ヶ月に1回という状態になりがちです。
- 公開直後の熱量に頼り、レビュー予定を組まない。最初の3ヶ月は更新されますが、その後の見直しの機会がなければ、そのまま止まります。
- 承認者を経営者1人に集中させる。多忙な時期に承認待ちの原稿が滞留し、担当者のモチベーションも落ちていきます。
最初に確認する3項目
- 更新担当者を、個人名で答えられるか「広報」「営業部」のような部署名しか出てこなければ、まだ決まっていません。公開済みのサイトなら、直近の更新を誰が行ったかを確認します。
- 起案から公開まで、何人を経由するかを数えたか紙に書き出して、確認待ちで止まりそうな人がいないかを見ます。
- 公開90日後・180日後の振り返りが、予定に入っているか制作会社との契約書や社内カレンダーに、日付があるかを確認します。公開済みのサイトなら、「お知らせ」「支援事例」の最終更新日を先に確認します。
6. eapとしてどう支援するか
eapがコーポレートサイトのリニューアルに入るときは、デザイン・構成の議論と同じ工程で、公開後の運用フローの設計を進めます。更新担当者の指名、承認フローの図式化、更新カレンダーの合意までを、制作の契約と同時に終わらせます。
CMSの選定や、更新画面の使いやすさに関わる実装は、グループ会社のラフノートと連携して進めます。担当者が実際に操作して迷わないかを、公開前に確認する工程まで含めて設計します。
制作費の見積もりだけを見て発注すると、公開後の運用は誰の担当にもなりません。経営の伴走者として、契約前の運用設計まで一緒に整理します。