- 自社の会議の問題は「多い」のか「決まらない」のか1つの会議に役割が混ざっているなら「多い」、決めたことが記録に残っていないなら「決まらない」。打ち手が違う(FIG.02)。
- 会議を減らす前に、何を確かめるか判断の種類ごとに、誰が決め、どの場で決め、会議が要るかを整理する。決裁が下りない会議が、減らす候補になる(FIG.03)。
- 決めたことを、どう実行に移すか議題・判断・決定事項・担当・期限・次回確認の6項目を、会議の最後に決定ログへ書き、次の会議の冒頭で確認する(FIG.04)。
会議は「決める場」と「回す場」に分け、決まったことは1つの決定ログに集める
上の3つで、いまの定例をどれに仕分けるかを見る。下の決定ログは、01と02の両方から書き込む
意思決定の場 ─ 経営戦略定例
予算・人事・優先順位を決める。隔週または月次、決裁者と論点オーナーだけの5〜7名。その会議で決裁が下りる
運用の場 ─ 改善MTG
進捗共有・詰まりの解消・カイゼンを回す。週次、現場リーダー中心、30分以内。記録さえ残ればよい
どちらでもない場
決裁が下りず、運用も回していない会議。廃止するか、メール・チャットでの共有に切り替える候補
決定ログ(Google Workspace)
01と02の決定事項・担当・期限・根拠を、会議の最後にここへ書く。チャットには書かない。次の会議の冒頭5分で確認する
頻度・人数・時間は、記事内で示している目安です。会社の規模や論点の数に合わせて調整してください。
- 「会議が多い」と「会議で何も決まらない」は別の病。前者は会議の本数、後者は意思決定の設計の問題で、打ち手が違う
- 会議には「意思決定の場(経営戦略定例)」と「運用の場(改善MTG)」しかない。1つの会議に混ぜると、どちらも機能しなくなる
- 決めても記録に残らない決定は、決めていないのと同じ。決定事項・担当・期限を、その場でGoogle Workspaceの決定ログに残すのが唯一の解
1. 現場で起きている違和感
従業員30〜100名規模の中堅企業(車検・車販店、設備工事、卸など)でよく受ける相談に、一見そっくりな2つがあります。ひとつは「会議が多すぎて現場が回らない」。もうひとつは「毎週きちんと会議しているのに、何も前に進まない」。どちらも会議への不満ですが、原因はまったく別です。
前者の会社では、週に定例が5〜6本、1人あたり月の会議時間が20時間を超えていることもあります。後者の会社では、会議の本数はむしろ普通なのに、出てくる声が「先週も同じ話をした」「あの件、結局どうなった?」。会議の数を減らす号令をかけると、前者は一時的にスッキリし、後者はむしろ重要な決定が宙に浮きます。同じ「会議を減らす」が、片方には効き、片方には逆効果になる——ここに、2つの問題を取り違えている構造があります。
2. その問題が起きる構造
会議には、本来2種類しかありません。経営判断・予算・人事・優先順位を「決める」意思決定の場(経営戦略定例)と、進捗共有・詰まりの解消・カイゼンを「回す」運用の場(改善MTG)です。性質も、必要な参加者も、適切な頻度も違います。
多くの会社は、この2つを1つの会議に混ぜます。15人が出る週次定例で、共有も議論も意思決定も全部やろうとする。すると、決めるべき論点は時間切れで持ち越され、共有事項は半分の人には不要で、誰も全部を追えなくなる。これが「会議が多い会社」の正体です。会議そのものではなく、1つの会議に役割を詰め込みすぎていることが問題です。
もうひとつの構造的な欠陥が、決めたことが記録に残らないことです。口頭で「じゃあそれで」と決まっても、議事録がチャットに流れて3ヶ月後には探せない。決定が記録に残らないと、決定は実行されません。次の会議でまた同じ議論が始まる。これが「会議で何も決まらない会社」の正体です。決まっていないのではなく、決めた事実が消えているのです。2つの詰まりを並べると、同じ「会議の不満」でも流れがまったく違うことが分かります(FIG.02)。
会議が増える原因は、「役割の混在」と「記録の欠落」の2つの詰まりに分けて見る
上の問いに答え、当てはまる側の流れを上から下へたどる(スマートフォンでは左の列が先)
- 15人が出る週次定例で、共有・議論・意思決定を全部やろうとする
- 共有に時間を取られ、決める論点が時間切れで持ち越される
- 持ち越した論点のために、別の会議が追加される
- 定例が週5〜6本に増え、現場が回らなくなる
- 口頭で「じゃあそれで」と決まり、議事録はチャットに流れる
- 担当と期限が書かれていないので、決定が実行されない
- 3ヶ月後には探せず、「あの件、結局どうなった?」が出る
- 次の会議でまた同じ議論が始まる
左の詰まりには「場を2つに分ける」(FIG.01)、右の詰まりには「決定ログを残す」(FIG.04)が効きます。両方が起きている会社も少なくありません。
「週5〜6本」は相談の中でよく見られる状態の目安で、統計ではありません。
3. 経営者が判断すべき論点
会議体を立て直すために、最初に決めるべきは次の3つです。
- いまの定例を「意思決定の場」「運用の場」「どちらでもない場」に仕分け、混在している会議をどう割るか
- 意思決定の場に、誰を入れて誰を外すか(決める人だけに絞れるか)
- 決定事項・担当・期限を、どの一箇所(GWSのどのファイル)に必ず残すか
この3つを決めずに「会議を減らせ」とだけ号令をかけると、決定の場まで一緒に消え、現場の独断か放置に振れます。減らすべきは会議の本数ではなく、1つの会議に詰め込まれた役割の混在です。
2つ目の論点「意思決定の場に誰を入れるか」は、判断の種類ごとに決める人を先に整理すると答えが出ます。決める人が決まっていない判断は、会議を開いても決まりません。
会議を減らす前に、判断の種類ごとに「誰が・どの場で決めるか」を1枚にする
行ごとに、決める人と場を埋める。右端の列が「会議なしで決めてよい」行は、その判断のための会議を減らせる
| 判断の種類 | 決める人 | 決める場 | 会議を開かずに済む条件 |
|---|---|---|---|
| 予算・投資 | 経営者 | 経営戦略定例 | ─ 会議で決め、決定ログに根拠を残す |
| 人事・体制 | 経営者 | 経営戦略定例 | ─ 会議で決め、決定ログに根拠を残す |
| 部門をまたぐ優先順位 | 経営者と論点オーナー | 経営戦略定例 | 論点オーナー間で合意済みなら、決定ログへの記録と報告で済ませる |
| 部門内の業務改善・手順変更 | 現場リーダー | 改善MTG | 影響が部門内に閉じるなら、担当者が決めて決定ログに書く |
| 日々の進捗・詰まりの解消 | 担当者 | 改善MTG またはチャット | 原則として会議は不要。止まっている点だけを改善MTGに上げる |
表は横にスクロールできます
この表は判断の割り振りの一例で、実績を示すものではありません。決裁の基準(金額・影響範囲など)は社内の職務権限規程に合わせて置き換えてください。
4. 現場で実行するための具体策
01全定例を棚卸しし、3つに仕分ける
いま走っている会議をすべて書き出し、「意思決定/運用/どちらでもない」に仕分けます。判断基準はシンプルで、その会議で決裁が下りるかです。下りないなら意思決定の場ではありません。「どちらでもない」に分類された会議は、廃止かメール・チャットへの格下げの候補です。週6本の定例が、この時点で3〜4本に減ることがよくあります。
02会議を2系統に再設計する
意思決定の場は「経営戦略定例」として、隔週または月次、決裁者と論点オーナーだけの5〜7名で行います。運用の場は「改善MTG」として、週次・現場リーダー中心・短時間(30分以内)で回します。決める会議はゆっくり少人数、回す会議は速く現場主体。この2系統に分けるだけで、「決めるべきことが時間切れで持ち越される」状態がなくなります。
03全会議に「決定ログ」を義務づける
会議の最後に、その場で決定事項・担当・期限・根拠をGoogle Workspaceの決定ログ(スプレッドシートかドキュメント)に書きます。書記は持ち回りで固定し、チャットには書かない。チャットは流れる場所、GWSは残る場所だからです。きれいな議事録を後で整える必要はなく、この4点さえ残れば実行に移せます。列に「議題」と「次回確認」を足しておくと、04の冒頭レビューでそのまま使えます(FIG.04)。
決定ログは「議題 → 判断 → 決定事項 → 担当 → 期限 → 次回確認」の1行で書く
左から右へ、会議の最後に1議題1行で埋める。「次回確認」の列は、次の会議の冒頭5分で上から読む
| 議題 | 判断(採った案と根拠) | 決定事項 | 担当 | 期限 | 次回確認 |
|---|---|---|---|---|---|
| 週次定例の見直し 記入例 | 経営戦略定例と改善MTGに分ける。決める論点が毎回持ち越されているため | 来月から2系統で運用する。現定例は今月で終了 | 総務リーダー | 今月末 | 2系統の日程と参加者が確定したか |
表は横にスクロールできます
1行目は記入の想定例で、実績を示すものではありません。スプレッドシートの1行=1議題として作ると、担当や期限で並べ替えて未完了を確認できます。
04会議の冒頭5分で、前回の決定ログをレビューする
毎回の会議を、前回の決定ログの確認から始めます。「決めたことが実行されているか」を冒頭5分で見るだけで、宙に浮く決定がなくなります。あわせて、アジェンダの先頭に「今日決めること」を1行で書く。決めることが1つもない会議は、そもそも開かずメールやチャットで済ませる——これが「会議が多い会社」への最後の効きどころです。
5. 失敗しやすい落とし穴
- 「会議を減らす」だけやって、意思決定の場を設計しない。決める場所まで消え、決定が現場の独断か放置に流れます。減らすのは運用・共有の会議、残すのは意思決定の場です。
- 意思決定の場に人を入れすぎる。10人を超える会議では決まりません。決裁者と論点オーナーだけに絞り、共有が必要な人には決定ログを後で見てもらいます。
- 議事録を「きれいに整える」ことに労力をかける。完璧な議事録より、その場で残る決定・担当・期限の3点。形式に時間をかけると、結局誰も書かなくなります。
- 決定ログをチャットに書く。流れて3ヶ月後には探せません。記録は必ずGWS(残る場所)に固定します。
最初に確認する3項目
- いま走っている定例を、すべて書き出せるか会議名・頻度・参加人数・所要時間を1枚に並べます。1人あたりの月の会議時間も、参加人数×時間でおおよそ出せます。
- それぞれの会議で、直近に下りた決裁を1つ言えるか言えない会議は、意思決定の場ではありません。運用の場か、どちらでもない場かを判断します(FIG.01)。
- 先月決めたことを、どこで探せばよいか答えられるかチャットを遡らないと見つからないなら、決定ログがまだありません。FIG.04の6列で、次の会議から書き始めます。
6. eapとしてどう支援するか
eapが会議体に入るときは、まず2週間ですべての定例を棚卸しし、意思決定/運用/どちらでもない、に仕分けます。そのうえで、経営戦略定例と改善MTGの2系統に再設計し、決定ログのテンプレ(GWSスプレッドシート)と書記の運用ルール、冒頭レビューの型までを作って、現場が迷わず回せる状態にします。
実装段階では、必要に応じてグループ会社のラフノートと連携し、決定ログの自動集計、未完了タスクのリマインド、議事録テンプレのGAS化まで巻き取ります。経営者の役割は、会議の進行ではなく、意思決定の場で「決めること」に集中する状態に寄せていきます。
会議の数を減らすのは、結果であって目的ではありません。意思決定の場と運用の場を分け、決めたことを必ず残す——この2つだけで、「会議が多い」も「何も決まらない」も同時に解けていきます。