プロジェクト概要
- Client|クライアント
- 大和美術印刷株式会社
- Project|プロジェクト
- 新規事業立ち上げ支援(事業開発プロセス設計〜顧客課題整理・市場競合調査・顧客ヒアリング〜商品・ブランド設計〜試験導入・販売準備)
- Industry|業界
- 印刷・販促支援 / 商業印刷・パッケージ・販促品の企画製造
- Service|支援領域
- 新規事業開発 / 事業戦略 / マーケティング戦略 / 商品・ブランド設計 / プロジェクト推進
- Period|支援期間
- 約8ヶ月(キックオフ〜試験導入・販売準備)
- Team|eap担当
- 株式会社eap(New Business Development Partner)
長年、印刷事業の一本柱で成長してきたが、商品・サービスの寿命が短くなり、コロナ禍で既存ビジネスが止まった経験もあって、新たな事業の柱が必要だった。社内でプロジェクトチームを立ち上げたものの、商品企画やマーケティングが初めてのメンバーが多く、進め方のノウハウが社内になかった。
「何をつくるか」から入らず、なぜ新規事業をやるのか、どんな柱をつくるのか、どの強みを活かすのかを先に整理。アイデア創出から顧客ヒアリング、試作、テスト販売、改善、拡大までのプロセスを設計し、各工程を社員のチームと一緒に回した。
顧客課題の整理と既存顧客ヒアリングを経て、製造現場向けの安全表示サービス「現場サインLab」として商品・ブランド設計まで到達。取引先2社への試験導入、既存顧客への案内、LPの構成整理まで進み、社員が次の事業にも使える事業開発の型が社内に残った。
創業60年超。印刷の一本柱に依存した状態から、次の柱をつくる必要があった。
大和美術印刷株式会社は、1963年創業、兵庫県姫路市に本社を置く印刷会社です。オフセット輪転やUVインクジェット、デジタル軟包装などの印刷設備を持ち、チラシやパッケージといった印刷物に加えて、オリジナルラベルボトル「販促水」をはじめとする販促品の企画製造まで手がけています。デザインから印刷、加工、納品までを社内で完結できる対応力と、小ロット・短納期への柔軟さが同社の強みです。
一方で、創業から60年を超える歴史のなかで、同社の売上は長らく印刷という一本の柱に支えられてきました。デジタル化が進み、商品・サービスの寿命が短くなるなかで、既存事業だけに依存し続けるリスクは年々大きくなっています。コロナ禍で既存のビジネスが一時的に止まった経験は、その危機感を決定的なものにしました。「販促水」に続く新たな事業の柱を複数育て、一つの事業に依存しない会社にしていく。これが経営の明確な方針でした。
同時に、同社は次世代への事業承継の時期にありました。経営陣だけで事業をつくるのではなく、次世代を担う社員が自ら考え、提案し、実行できる組織へ変わっていく必要があります。そこで社内に新商品開発、業務システム、EC、メールマガジンの4つのプロジェクトチームを立ち上げ、そのなかでも新商品開発チームを重点的に進めることにしました。ただし、メンバーの多くは商品企画やマーケティングに初めて取り組む社員です。「新規事業をつくる」と決めたものの、何から手をつけ、どう進めればよいのかが社内に蓄積されていない。eapが新規事業開発のパートナーとして参画したのは、このタイミングです。
課題は「アイデアがないこと」ではなく、アイデアを事業まで運ぶ道筋と型がないこと。
ご相談の出発点は「新商品を開発したい」でした。しかし、状況を整理していくと、本質的な課題は「良いアイデアがないこと」ではありませんでした。
受注産業である印刷会社では、日々の仕事は「お客様から依頼を受けてつくる」ことが中心です。自分たちで顧客の課題を見つけ、商品を企画し、値段をつけ、売り方まで設計する。この0→1の経験が、社内にはほとんどありませんでした。アイデアを出す場をつくっても、「それは本当に誰の課題なのか」「どうやって確かめるのか」「いつ・誰が・何をするのか」が決まらないまま止まってしまう。プロジェクトチームのメンバーにも、それぞれ本業があります。役割と進め方が曖昧なままでは、熱意があっても前に進みません。必要だったのは、アイデアを事業まで運ぶ道筋と、社員が動ける型でした。
「何をつくるか」から入らず、なぜ・どの柱を・どう検証するかから設計する。
eapが最初に行ったのは、商品アイデアの評価ではなく、「会社としてなぜ新規事業を行うのか」「どのような事業の柱をつくるのか」「どの強みを活かすのか」の整理でした。経営者と目指す姿を共有したうえで、プロジェクトの目的をメンバーに伝える説明会から始めています。
そのうえで、アイデアを出して終わりにしないために、アイデア創出、アイデア選定、顧客ヒアリング、試作品作成、テスト販売、フィードバック回収、改善、販売拡大という、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)に至るまでのプロセスを先に設計しました。各工程で「何ができていれば次に進めるか」を定義し、月1回の現地訪問と定例MTGで、社員のチームと一緒に一つずつ進めていきました。
プロセス設計から試験導入・販売準備まで、社員と一緒に手を動かす。
eapが担ったのは、戦略資料の作成ではなく、新規事業開発の各工程を社員のチームと一緒に回す「事業開発パートナー」の役割です。月1回の現地訪問(計8回)と定例MTGを軸に、以下を実行しました。
目的の共有から試験導入・既存顧客への案内まで、6つのフェーズ。
「新規事業をやる」と決めてから、商品が市場に出るまで。プロジェクトが形になっていった過程を、6つのフェーズで示します。
支援アウトプット
「戦略を考えました」で終わらせず、社員が次も使える道具として残す。
ここでは、実際のプロジェクトで作成した支援アウトプットの一部をご紹介しています。機密情報・売上目標・価格・企業名等を除き、公開用に再編集しています。
最初の案が正解ではなかった。顧客の声で、市場も価値も書き換えた。
最初に選んだ案が、そのまま商品になったわけではありません。アイデア選定の段階で置いた仮説は、同業へのヒアリングと顧客課題の整理を経て一度書き換え、さらに既存顧客へのヒアリングで、顧客が本当に重視している価値を知ることになりました。前提を固定せず、顧客の声で市場も価値も更新していったことが、このプロジェクトの核です。
「新商品ができた」で終わらない。社員が次の事業をつくれる型が残った。
今回の成果は、戦略資料が納品されたことでも、アイデアが1つ選ばれたことでもありません。社員のプロジェクトチームが、顧客に聞き、商品を設計し、ブランドをつくり、取引先に試験導入し、既存顧客への案内とLPの準備まで進めたこと。そして、その工程が次の事業にも使える型として社内に残ったことです。
アイデア創出から販売拡大までの7工程と、PMFに必要な4つの条件、定例MTGのフォーマット、タスク表、役割分担が、社員が使える形で整理されました。「アイデアを出す場」で止まっていた活動が、「顧客に聞き、市場に出して確かめる」工程として回るようになっています。
7業界×3規模の課題整理と、製造業6社・同業1社・自社工場長へのヒアリングを経て、ターゲット、顧客課題、提供価値、バリュープロポジション、競合との差別化、販売方法、サービス提供フローを具体化。製造現場向けの安全表示サービス「現場サインLab」として、屋内床用・屋外誘導用の2ラインで商品を設計しました。「自社がつくりたいもの」ではなく、「現場が困っていること」を起点にした設計です。
素材・サイズ・デザイン・コストを確定して試作品を製作し、取引先2社へ試験導入。受注後の製造フローを構築し、既存顧客向けの案内文面(初回・フォローアップ)とLPの構成整理まで進めました。LPは社内のデジタルチームが制作し、eapが修正点をレビュー。現在は「現場サインLab」として公開され、同社の公式サイトからも案内されています。
営業、デザイン、技術のメンバー5名がそれぞれの役割を持ち、ヒアリングも試作もブランド名の決定も自分たちで行いました。議事録、タスク表、ヒアリングシート、選定基準、バリュープロポジションの整理といった道具はすべて社内に残り、2つ目以降のアイデアにも同じ型で取り組める状態です。
※ セグメント数・ヒアリング数・試験導入数は、本プロジェクトの管理表・ヒアリング記録にもとづく実数です。売上・問い合わせ件数・受注件数などの定量成果は、テスト販売段階のため公開していません。
- 「何をつくるか」の前に、なぜ新規事業をやるのか・どんな柱をつくるのか・どの強みを活かすのかを経営者と共有し、メンバーに伝えるところから始めた。
- アイデアの良し悪しを感覚で議論せず、選定基準に全員で当てはめて1案に絞り込んだ。同業ヒアリングと顧客課題の整理を経て、初期案から市場を転換する判断ができた。
- ヒアリングの聞き手は社員自身。「更新の手間」「耐久性と安全性」「成功基準は事故・ミスロスの減少」という学びが、商品の価値の置き方を変えた。
- ブランド名・サービス名の候補出しから確定まで、社員全員で行った。安全表示の文言候補84件、屋内床用・屋外誘導用の2ラインまで商品として具体化された。
- 試作品の製作と試験導入、既存顧客向け案内文面、LPの構成整理まで進み、「戦略をつくって終了」ではなく市場に出して反応を見る段階に到達した。
- プロセス、フォーマット、道具がすべて社内に残っており、次の新規事業にも同じ型で取り組める。
アイデア出しで止まっていたプロジェクトが、顧客に聞き、市場に出すところまで進んだ。

「アイデア出しで止まっていたプロジェクトが、お客様に聞き、試作し、市場に出すところまで進みました。何より、社員が自分たちで進められるようになったことが大きいです。」
当社は60年以上、印刷を軸に事業を続けてきました。ただ、チラシをはじめとする印刷物の需要が今後も同じように続くとは考えていません。コロナ禍で仕事が止まった経験もあり、販促水に続く新たな事業の柱を、それも経営陣だけでなく次の世代の社員が中心になってつくっていく必要があると感じていました。
社内にプロジェクトチームを立ち上げたものの、商品企画やマーケティングを経験したことのないメンバーがほとんどで、正直なところ何から手をつければよいのか分からない状態でした。eapには、アイデアを出すところからではなく、なぜ新規事業をやるのか、どう進めていくのかを整理するところから入ってもらいました。
印象に残っているのは、お客様へのヒアリングを社員自身が行ったことです。自分たちが売りたいものではなく、現場が本当に困っていることを聞いて商品を組み立てていく。その過程で、最初に考えていた案から市場を変える判断もしました。外部の方に「答え」をもらうのではなく、自分たちで考えて決める経験ができたことが、このプロジェクトの一番の成果だと思っています。
現場サインLabはまだ育てている途中ですが、進め方の型は社内に残りました。この型を使って、2つ目、3つ目の柱をつくっていきたいと考えています。
外部が全部つくらない。社員が次も回せる状態をつくる。
「何をつくるか」より先に、「なぜ・どう進めるか」
新規事業の相談は、多くの場合「こんな商品をつくりたい」から始まります。しかしeapは、最初に商品の話をしません。会社としてなぜ新規事業をやるのか、どのくらいの規模の柱を、いつまでに、どの強みを使ってつくるのか。ここが共有されていないと、アイデアの評価基準が人によって変わり、議論が感覚論に戻ってしまいます。
今回も、経営者との整理と、メンバー向けの説明会から始めました。そのうえで、アイデアから販売拡大までの工程と、各工程で「何ができていれば次に進めるか」を先に決めています。道筋が見えていれば、初めてのメンバーでも自分の役割が分かり、動けるようになります。
顧客に聞くのは、社員自身
eapがヒアリングを代行することもできました。しかし今回は、ヒアリングシートの設計と同席、振り返りまでをeapが担い、実際に聞くのは社員自身にしています。既存取引先との関係を持っているのは同社の営業担当ですし、「現場が何に困っているか」を自分の耳で聞いた経験は、次の事業をつくるときにそのまま資産になるからです。
初回のヒアリングは質問が抽象的になりがちでした。そこで、試作品を持って現場で聞く方式に切り替えています。うまくいかなかったことを工程に戻して直す。この繰り返しそのものが、社内に残したかった「型」です。
小さく出して、反応から直す
新規事業で最も避けたいのは、時間をかけて戦略と商品をつくり込み、市場に出す前に力尽きることです。今回は、試作品を取引先に試験導入し、既存顧客への案内、LPと、小さく出しながら反応を見る順番にしています。同社の経営陣が当初から「四半期に一度は市場に出して確かめるサイクルにしたい」と考えていたことも、この進め方と合っていました。
eapの新規事業開発支援は、資料をつくって終わりではありません。顧客ヒアリングから商品開発、テスト販売まで、0→1の実務を一緒に進めます。
1つ目の柱を育てながら、2つ目・3つ目のアイデアを同じ型で回す。
「現場サインLab」は、試験導入と既存顧客への案内を経て、公開されたLPを起点に問い合わせから無料提案、受注へとつなげる段階に入っています。ここからは、導入企業の声を事例として蓄積し、案内の対象を広げ、商品ラインを増やしながら、1つ目の柱として育てていく工程が続きます。
同時に、このプロジェクトで社内に残ったプロセスとフォーマット、ヒアリングの型は、2つ目・3つ目のアイデアにそのまま使えるものです。一つの事業に依存しない会社へ。社員が主体となって次の柱をつくり続ける取り組みは、ここからが本番です。eapの新規事業開発支援は、「何をつくるか」がまだ決まっていない段階からご相談いただけます。




