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FOUNDER'S TRACK RECORD ─ 医療・歯科技工 / SaaS

紙とLINEの技工指示を、ひとつの受発注へ。

ProductDELTAN ORDERCompanyDeltan株式会社Role黒崎 勇也(立ち上げ期に参画)
1,500%以上リリース後1年の成長(Deltan株式会社 2024年10月公式発表)
本記事は、株式会社eapによるクライアント支援事例ではありません。代表・黒崎勇也が過去に事業開発・プロダクトマネジメント等のメンバーとして携わった、プロダクト開発の実績を紹介するものです。

「DELTAN ORDER(デルタンオーダー)」は、Deltan株式会社が提供する、歯科技工所と歯科医院のあいだの受発注・データ連携を担うSaaSです。技工指示書、口腔内スキャナー(IOS)のスキャンデータ、口腔内・顔貌写真、CTなど、それまで紙・LINE・メーカー別クラウドに分散していたデータをクラウドで一元管理します。

eap代表・黒崎勇也は、このプロダクトの立ち上げ期に参画し、事業ディレクション・プロダクトマネジメント・セールス・カスタマーサクセス・マーケティングを担当しました。プロダクトはその後実際に市場で使われ、Deltan株式会社の公式発表(2024年10月)ではリリース後1年で1,500%以上の成長を記録しています。本記事では、当時の検討資料をもとに、ユーザー課題を起点に事業・マーケティング・プロダクト・開発を横断しながらサービスを形にしていった過程を紹介します。

プロダクト立ち上げ期
新規事業開発プロダクト開発セールスマーケティングカスタマーサクセス
DELTAN ORDERの実際の画面(出典=公式サイト order.deltan.jp)。歯科医院からの技工指示書・IOSスキャンデータ・進行状況を、技工所側でひとつの画面で管理し、スキャンデータはそのままプレビューできる。
01プロダクト概要

プロダクト概要

Product|プロダクト
DELTAN ORDER(デルタンオーダー)─ 歯科技工の受発注・データ連携SaaS
Company|提供会社
Deltan株式会社
Industry|業界
医療・歯科技工 / SaaS
User|主なユーザー
歯科技工所(ラボ)と、取引先の歯科医院(クリニック)
Role|黒崎の担当
事業ディレクション / プロダクトマネジメント / セールス / カスタマーサクセス / マーケティング
Position|記事の位置づけ
eapの支援事例ではなく、代表・黒崎勇也の過去プロダクト開発実績
当時の課題

口腔内スキャナー(IOS)の普及で歯科技工のデジタル化が進む一方、技工指示書やスキャンデータの受け渡しは紙・LINE・メーカー別クラウドに分散。データの付け合わせや二重入力が、技工所と歯科医院の双方で日々の負担になっていた。

アプローチ

プロダクトを作る前に、技工所と歯科医院の業務を工程単位で書き出して解剖。規模の異なる技工所へのヒアリングで仮説を検証し、ターゲットを歯科医院から技工所へ転換したうえで、複数メーカーのIOSデータを自動で一元管理する受発注SaaSとして設計・立ち上げた。

成果

2023年4月にβ版を正式発表。複数メーカーのスキャンデータを自動一元管理する機能は発表当時「日本初」とされ、β版利用技工所では受注漏れ0件を実現。その後も利用は拡大し、同社の公式発表(2024年10月)ではリリース後1年で1,500%以上の成長を記録。サービスは現在も提供が続いている。

02開発の背景

デジタル化が進んだからこそ、「あいだ」が詰まった。

歯科治療で入れ歯や被せ物(技工物)を作るとき、歯科医院は技工指示書とともに歯型のデータや模型を歯科技工所へ送り、技工所が設計・製作して納品します。この歯型の採取が、従来の印象材による型取りから、口腔内スキャナー(IOS)によるデジタルスキャンへと置き換わりつつありました。コロナ禍での感染対策や設備投資への補助金もこの流れを後押しし、川下にあたる技工所でもデジタル技工が広がり始めていた時期です。

ところが、データの受け渡しはデジタル化に追いついていませんでした。スキャンデータはIOSメーカーごとに別々のクラウドからダウンロードし、指示書はLINEの写真送付や紙のまま。技工所の中では、データ・模型・指示書の付け合わせ、作業記録(技工録)の記載、請求書への転記といった、製作以外の確認・転記作業が工程のあいだに積み上がっていました。デジタル化が進んだからこそ、機器と機器、会社と会社の「あいだ」の受け渡しが新しいボトルネックになっていた、という状況です。

DELTAN ORDERは、この「あいだ」を引き受けるプロダクトとして構想されました。黒崎はこの立ち上げ期に参画し、事業の方向づけからプロダクトマネジメント、セールス・マーケティングまでを担当しています。

03解決した課題

課題は「データ管理が面倒」の一言では済まなかった。

表面的な課題は「IOSデータの管理が煩雑」に見えます。しかし技工所と歯科医院の業務を工程単位で書き出してみると、課題は工程ごとに違う顔をしていました。データを受け取る段階では取得手段の分散、製作に入る前は指示書との付け合わせ、製作中は技工録の記載、納品後は請求への転記。それぞれ別の手間が、別の場所で発生していました。

もうひとつの発見は、同じ課題でも企業規模によって温度感がまったく違うことです。一定規模の技工所はすでに独自の管理方法やERPを持ち、小規模な技工所はそもそもプロセス管理に困っていない場合もある。「誰の・どの工程の課題を解くのか」を決めることが、プロダクト設計そのものでした。

Before ─ 当時の状況
製作工程のデジタル化は進んでいた
IOSの普及で技工物の設計・加工はデジタル化が進行。一方、当時デジタル技工のシェアは1割程度とされ、大半の技工所は従来方式と併存。データと模型・紙の指示書が混在する過渡期にあった。
Bottleneck ─ 本質的なボトルネック
工程の「あいだ」に受け渡しコストが溜まる
スキャンデータはメーカー別クラウドから個別ダウンロード、指示書はLINEの写真や紙で到着。データ・模型・指示書の付け合わせ、技工録の記載、請求書への二重入力など、製作以外の確認・転記作業が工程のあいだに積み上がっていた。
To-Be ─ 目指した状態
受発注とデータを、ひとつの場所に集める
複数メーカーのIOSデータを自動で取得・一元管理し、デジタル指示書・受注管理・納品・請求までをひとつのプラットフォームで扱う。技工士が確認・転記ではなく製作に集中できる状態を目指した。
04設計と立ち上げ

業務の解剖から始めて、売れる仕組みまで作る。

進め方の特徴は、機能のアイデアからではなく、業務の解剖から始めたことです。そして機能を作ることと、それが使われ、売れる状態を作ることを分けずに、事業・マーケティング・プロダクト・開発を横断して立ち上げを進めました。

STEP 01
業務を解剖する
いきなり機能を考えず、技工所と歯科医院それぞれの業務を「依頼内容の確認→タスク管理→製作→発送準備→請求・納品」といった工程単位で書き出した。誰が・どの場所で・どの道具を使って作業しているかまで確認し、保険・自費、総義歯・部分義歯など診療パターン別の業務フローも整理。そのうえでペイン(負担)を「顕在化している課題」「潜在的な課題」「企業によって温度感が異なる課題」の3つに分類した。
STEP 02
仮説を現場で検証する
「指示書・データ管理」「技工制作」「納品・請求・支払」の3つの工程ごとに当初仮説を立て、規模の異なる複数の技工所へのヒアリングで検証した。IOSデータの自動取得・一元管理は強く支持された一方で、「データを取り込むだけでは業務は完結しない」「請求まわりの課題は企業規模で温度差が大きい」といった、仮説とズレる事実も拾い上げていった。
STEP 03
ターゲットを転換する
当初想定していた歯科医院向けから、検証を踏まえて歯科技工所向けへとターゲットを転換した。全国の技工所は約2万件、その9割超が1〜4人の小規模事業者で、単独では大きな市場とは言えない。それでも技工所を押さえれば、その取引先である全国の歯科医院への接点が生まれる。「小さい市場で確かな価値を作ってから、隣の市場へ登る」という道筋を選んだ。
STEP 04
課題を機能に翻訳する
解剖したペインを解決手段に対応づけて、機能を設計した。核に置いたのは複数メーカーのIOSデータを自動で取得・一元管理する機能。そこにデジタル技工指示書、受発注管理、納期管理、データプレビューなどを段階的に重ね、納品・請求まわりへの対応も見据えた。料金は無料プランから始められる、取引件数に応じた従量課金型とし、導入のハードルを下げた。
STEP 05
売れる仕組みまで作る
限られたリソースをどこに集中するかを市場構造から判断し、デジタル化率が高く関連商材のニーズも大きい大手技工所(ラボ)に照準を定めた。ウェビナーを軸に、紹介・手紙とDM・導入事例の活用を組み合わせて新規獲得の型を作り、導入ラボの営業チームと連携して取引先の歯科医院側へ広げる横展開も設計。SaaSを入口として、技工所が日々使う商材の提供へつなげる事業全体の絵を描いた。
05担当領域

黒崎が担当したこと。

当時の役割分担の記録から確認できる範囲で、黒崎が担当した領域を記載しています。開発の実装は専任のエンジニアが担っており、黒崎はプロダクトマネジメント・ディレクションの立場で要件と優先順位を決め、エンジニアと連携する役割でした。

01事業ディレクション事業・プロダクト戦略の方向づけ、注力領域と優先順位の決定
02プロダクトマネジメント開発ロードマップと要件の整理、エンジニアとの連携
03セールス技工所への提案・商談、導入ラボの営業チームとの連携
04カスタマーサクセス導入後の定着支援、現場の要望の吸い上げと開発への反映
05マーケティングウェビナー・DM・導入事例活用など、新規獲得施策の設計
06当時の検討資料

当時の検討資料

プロダクトの前に、業務の解剖図をつくる。

ここでは、当時の検討資料の一部を、機密情報・取引先情報を除いて公開用に再構成して紹介しています。

検討資料01 業務解剖。歯科技工所と歯科医院の業務を、依頼確認からタスク管理・製作・発送準備・請求納品までの工程単位で書き出し、工程ごとのペインを顕在課題・潜在課題・温度差のある課題の3つに分類した図。
01 業務解剖|技工所と歯科医院の業務を工程単位で書き出し、使う道具や場所まで確認。工程ごとのペインを「顕在」「潜在」「温度差」の3つに分類し、解決手段の仮説につなげました。
検討資料02 仮説検証。指示書・データ管理、技工制作、納品・請求・支払の3工程ごとに当初仮説とヒアリングで得られた事実を突き合わせ、ターゲットを歯科医院から歯科技工所へ転換した判断を整理した図。
02 仮説検証|3つの工程ごとに当初仮説と、規模の異なる技工所へのヒアリングで得られた事実を突き合わせ。検証結果を踏まえて、ターゲットを歯科医院から技工所へ転換しました。
検討資料03 市場の登り方。全国約2万件・9割超が小規模という歯科技工所市場の構造を整理し、デジタル化率の高い大手ラボから導入を進め、SaaSを入口に商材提供へ広げる事業設計をまとめた図。
03 市場の登り方|約2万件・9割超が小規模という技工所市場の構造を整理。デジタル化率の高い大手ラボから登る優先順位と、SaaSを入口に商材提供へつなげる事業全体の設計をまとめました。
07仮説と事実

仮説は、そのまま正解にはならなかった。

検証で重要だったのは、仮説が当たっていた部分よりも、ズレていた部分でした。3つの工程ごとに当初仮説とヒアリングで得られた事実を突き合わせ、プロダクトの範囲とターゲットを更新しています。

指示書・データ管理 ─ IOSデータの自動取得・一元管理
仮説:困りごとの中心 事実:強く支持された
技工制作 ─ データを一元化すれば業務が回るか
仮説:一元化で完結 事実:受注管理まで必要
納品・請求・支払 ─ 転記の二重入力
仮説:共通の課題 事実:規模で温度差が大きい
「IOSデータだけ取り込んでも、技工録や受注管理が残れば結局二重管理になる」という現場の声が、プロダクトの範囲を受発注管理まで広げる判断の根拠になりました。同時に、規模によって課題の温度感が違うという事実が、大手ラボへの集中とターゲット転換につながっています。
08成果

市場に投入され、リリース後1年で1,500%以上の成長。

本記事では、成果として公開情報で確認できる事実のみを記載しています。

GROWTH
プロダクトの成長

作って終わりではなく、市場で使われ、成長した。

歯科業界のデジタル化を背景に、DELTAN ORDERの利用は拡大していきました。Deltan株式会社の公式発表(2024年10月)によれば、DELTAN ORDERはリリース後1年で1,500%以上の成長を記録しています。

1,500%以上
リリース後1年の成長(出典:Deltan株式会社 PR TIMES・2024年10月21日)
500社超
導入社数(Deltan株式会社 公式サイトより・2026年9月閲覧時点)
日本初
複数メーカーのIOSデータを自動で一元管理する機能(2023年4月の発表当時・同社発表)
0
β版を利用した技工所での受注漏れ(同社発表)

※ 出典=Deltan株式会社 2023年4月20日プレスリリース(β版発表)。

  • 2023年4月20日、デジタル歯科技工指示書サービス「DELTAN ORDER」のβ版を正式発表。
  • 技工指示書・スキャンデータ・口腔内/顔貌写真・CTなどをクラウドで一元管理するサービスとして、全国の歯科技工所への導入が広がっている。
  • 2024年10月、Deltan株式会社は「リリース後1年で1,500%以上の成長」を公式発表。同じ発表の中で約5億円の資金調達も公表された(出典:PR TIMES・2024年10月21日)。
  • DELTAN ORDERは現在もDeltan株式会社により提供が続いている。

なお、この成長はDeltan株式会社とプロダクトに関わった方々によるものです。数値はいずれも同社の公開情報であり、eapの支援による成果ではありません。

09当時の意思決定

当時の意思決定を、3つだけ。

株式会社eap 代表取締役
黒崎 勇也
プロフィール →

作る前に、業務をすべて書き出した

このプロダクトの起点は、機能のアイデアではなく業務の解剖でした。技工所と歯科医院の仕事を工程単位で書き出し、誰が・どこで・何を使って作業しているかまで確認してから、どの工程の・誰の・どの手間を無くすのかを決めています。

機能一覧から考え始めると、「あれば便利」なものが増えていきます。業務から考え始めると、「無いと困る」ものだけが残る。プロダクトの範囲を決める基準を、最初に業務の側に置いたことが、その後の判断をぶれにくくしました。

ソリューションではなく、ターゲットを変えた

検証で手応えと違和感が混ざったとき、機能を変える前にターゲットを見直しました。当初想定の歯科医院向けから、歯科技工所向けへの転換です。

技工所市場は単独では小さいものの、技工所を押さえればその取引先である歯科医院への接点が生まれる。解くべき課題の持ち主を変えることで、プロダクトの価値と市場の登り方が同時に定まりました。

「作ること」と「売れること」を分けなかった

機能開発と並行して、ウェビナーやDMによる新規獲得、導入ラボの営業チームとの連携、無料から始められる料金設計、SaaSを入口とした商材提供までを一体で設計しました。

プロダクトは作った瞬間ではなく、使われ、対価が支払われ続けて初めて事業になります。事業・マーケティング・プロダクト・開発を分業ではなく一続きのものとして扱った経験は、いまの仕事の進め方の原型になっています。

10この経験と、いまのeap

この経験が、いまのeapの支援につながっている。

DELTAN ORDERは、その後もDeltan株式会社のプロダクトとして提供・成長が続いています。冒頭に記載のとおり、本プロダクトはeapが支援・開発したものではなく、代表・黒崎勇也が過去に携わった実績です。

一方で、この立ち上げで経験した「業務を解剖してから作る」「仮説を現場で検証し、必要ならターゲットごと見直す」「作ることと売れることを分けない」という進め方は、eapが現在提供している新規事業開発・プロダクト開発・DX支援・グロース支援の土台になっています。戦略だけでも、制作だけでもなく、事業の成果まで一気通貫で設計する ── eapの支援スタイルの背景には、代表自身のプロダクト立ち上げの経験があります。

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