プロダクト概要
- Product|プロダクト
- DELTAN ORDER(デルタンオーダー)─ 歯科技工の受発注・データ連携SaaS
- Company|提供会社
- Deltan株式会社
- Industry|業界
- 医療・歯科技工 / SaaS
- User|主なユーザー
- 歯科技工所(ラボ)と、取引先の歯科医院(クリニック)
- Role|黒崎の担当
- 事業ディレクション / プロダクトマネジメント / セールス / カスタマーサクセス / マーケティング
- Position|記事の位置づけ
- eapの支援事例ではなく、代表・黒崎勇也の過去プロダクト開発実績
口腔内スキャナー(IOS)の普及で歯科技工のデジタル化が進む一方、技工指示書やスキャンデータの受け渡しは紙・LINE・メーカー別クラウドに分散。データの付け合わせや二重入力が、技工所と歯科医院の双方で日々の負担になっていた。
プロダクトを作る前に、技工所と歯科医院の業務を工程単位で書き出して解剖。規模の異なる技工所へのヒアリングで仮説を検証し、ターゲットを歯科医院から技工所へ転換したうえで、複数メーカーのIOSデータを自動で一元管理する受発注SaaSとして設計・立ち上げた。
2023年4月にβ版を正式発表。複数メーカーのスキャンデータを自動一元管理する機能は発表当時「日本初」とされ、β版利用技工所では受注漏れ0件を実現。その後も利用は拡大し、同社の公式発表(2024年10月)ではリリース後1年で1,500%以上の成長を記録。サービスは現在も提供が続いている。
デジタル化が進んだからこそ、「あいだ」が詰まった。
歯科治療で入れ歯や被せ物(技工物)を作るとき、歯科医院は技工指示書とともに歯型のデータや模型を歯科技工所へ送り、技工所が設計・製作して納品します。この歯型の採取が、従来の印象材による型取りから、口腔内スキャナー(IOS)によるデジタルスキャンへと置き換わりつつありました。コロナ禍での感染対策や設備投資への補助金もこの流れを後押しし、川下にあたる技工所でもデジタル技工が広がり始めていた時期です。
ところが、データの受け渡しはデジタル化に追いついていませんでした。スキャンデータはIOSメーカーごとに別々のクラウドからダウンロードし、指示書はLINEの写真送付や紙のまま。技工所の中では、データ・模型・指示書の付け合わせ、作業記録(技工録)の記載、請求書への転記といった、製作以外の確認・転記作業が工程のあいだに積み上がっていました。デジタル化が進んだからこそ、機器と機器、会社と会社の「あいだ」の受け渡しが新しいボトルネックになっていた、という状況です。
DELTAN ORDERは、この「あいだ」を引き受けるプロダクトとして構想されました。黒崎はこの立ち上げ期に参画し、事業の方向づけからプロダクトマネジメント、セールス・マーケティングまでを担当しています。
課題は「データ管理が面倒」の一言では済まなかった。
表面的な課題は「IOSデータの管理が煩雑」に見えます。しかし技工所と歯科医院の業務を工程単位で書き出してみると、課題は工程ごとに違う顔をしていました。データを受け取る段階では取得手段の分散、製作に入る前は指示書との付け合わせ、製作中は技工録の記載、納品後は請求への転記。それぞれ別の手間が、別の場所で発生していました。
もうひとつの発見は、同じ課題でも企業規模によって温度感がまったく違うことです。一定規模の技工所はすでに独自の管理方法やERPを持ち、小規模な技工所はそもそもプロセス管理に困っていない場合もある。「誰の・どの工程の課題を解くのか」を決めることが、プロダクト設計そのものでした。
業務の解剖から始めて、売れる仕組みまで作る。
進め方の特徴は、機能のアイデアからではなく、業務の解剖から始めたことです。そして機能を作ることと、それが使われ、売れる状態を作ることを分けずに、事業・マーケティング・プロダクト・開発を横断して立ち上げを進めました。
黒崎が担当したこと。
当時の役割分担の記録から確認できる範囲で、黒崎が担当した領域を記載しています。開発の実装は専任のエンジニアが担っており、黒崎はプロダクトマネジメント・ディレクションの立場で要件と優先順位を決め、エンジニアと連携する役割でした。
当時の検討資料
プロダクトの前に、業務の解剖図をつくる。
ここでは、当時の検討資料の一部を、機密情報・取引先情報を除いて公開用に再構成して紹介しています。
仮説は、そのまま正解にはならなかった。
検証で重要だったのは、仮説が当たっていた部分よりも、ズレていた部分でした。3つの工程ごとに当初仮説とヒアリングで得られた事実を突き合わせ、プロダクトの範囲とターゲットを更新しています。
市場に投入され、リリース後1年で1,500%以上の成長。
本記事では、成果として公開情報で確認できる事実のみを記載しています。
作って終わりではなく、市場で使われ、成長した。
歯科業界のデジタル化を背景に、DELTAN ORDERの利用は拡大していきました。Deltan株式会社の公式発表(2024年10月)によれば、DELTAN ORDERはリリース後1年で1,500%以上の成長を記録しています。
※ 出典=Deltan株式会社 2023年4月20日プレスリリース(β版発表)。
- 2023年4月20日、デジタル歯科技工指示書サービス「DELTAN ORDER」のβ版を正式発表。
- 技工指示書・スキャンデータ・口腔内/顔貌写真・CTなどをクラウドで一元管理するサービスとして、全国の歯科技工所への導入が広がっている。
- 2024年10月、Deltan株式会社は「リリース後1年で1,500%以上の成長」を公式発表。同じ発表の中で約5億円の資金調達も公表された(出典:PR TIMES・2024年10月21日)。
- DELTAN ORDERは現在もDeltan株式会社により提供が続いている。
なお、この成長はDeltan株式会社とプロダクトに関わった方々によるものです。数値はいずれも同社の公開情報であり、eapの支援による成果ではありません。
当時の意思決定を、3つだけ。
作る前に、業務をすべて書き出した
このプロダクトの起点は、機能のアイデアではなく業務の解剖でした。技工所と歯科医院の仕事を工程単位で書き出し、誰が・どこで・何を使って作業しているかまで確認してから、どの工程の・誰の・どの手間を無くすのかを決めています。
機能一覧から考え始めると、「あれば便利」なものが増えていきます。業務から考え始めると、「無いと困る」ものだけが残る。プロダクトの範囲を決める基準を、最初に業務の側に置いたことが、その後の判断をぶれにくくしました。
ソリューションではなく、ターゲットを変えた
検証で手応えと違和感が混ざったとき、機能を変える前にターゲットを見直しました。当初想定の歯科医院向けから、歯科技工所向けへの転換です。
技工所市場は単独では小さいものの、技工所を押さえればその取引先である歯科医院への接点が生まれる。解くべき課題の持ち主を変えることで、プロダクトの価値と市場の登り方が同時に定まりました。
「作ること」と「売れること」を分けなかった
機能開発と並行して、ウェビナーやDMによる新規獲得、導入ラボの営業チームとの連携、無料から始められる料金設計、SaaSを入口とした商材提供までを一体で設計しました。
プロダクトは作った瞬間ではなく、使われ、対価が支払われ続けて初めて事業になります。事業・マーケティング・プロダクト・開発を分業ではなく一続きのものとして扱った経験は、いまの仕事の進め方の原型になっています。
この経験が、いまのeapの支援につながっている。
DELTAN ORDERは、その後もDeltan株式会社のプロダクトとして提供・成長が続いています。冒頭に記載のとおり、本プロダクトはeapが支援・開発したものではなく、代表・黒崎勇也が過去に携わった実績です。
一方で、この立ち上げで経験した「業務を解剖してから作る」「仮説を現場で検証し、必要ならターゲットごと見直す」「作ることと売れることを分けない」という進め方は、eapが現在提供している新規事業開発・プロダクト開発・DX支援・グロース支援の土台になっています。戦略だけでも、制作だけでもなく、事業の成果まで一気通貫で設計する ── eapの支援スタイルの背景には、代表自身のプロダクト立ち上げの経験があります。



