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CASE STUDY ─ アグリテック / 植物生体情報の計測・分析プラットフォーム

人の目と経験に頼る
生育調査を、AIへ。
画像解析で実現可能性を検証。

ClientPLANT DATA株式会社ProjectAI生育状況自動調査システム 要求・要件定義/PoC・技術検証支援Partner株式会社eap

トマトの生育調査を、人の目と手作業からAIによる画像解析へ。eapが、現場の調査業務の分解からAIの要求・要件定義、必要なデータ・撮影条件の整理、画像解析技術の調査と実データによるPoC、次フェーズの技術課題の整理までを支援。

PLANT DATA株式会社は、植物の生体情報を計測・分析・活用するためのプラットフォームを提供する企業です。クロロフィル蛍光計測や光合成・蒸散のリアルタイム計測など、植物の状態をデータで捉える技術を軸に、「植物の声を聴く」栽培管理のための植物診断を提供しています。同社が取り組んだのは、トマトの生産現場で週に一度行われている生育調査を、撮影した映像とAIモデルによって自動化すること。eapはこのプロジェクトのAI企画・要求・要件定義とプロジェクトマネジメントを担い、AIエンジニアチームと連携して、パノラマ化、デプス推定、物体検出、セグメンテーションなどの画像解析技術の実現可能性を実データで検証しました。

約2ヶ月(要求・要件定義〜技術検証報告)
AI企画・要求・要件定義AI PoC・技術検証プロジェクトマネジメント
PLANT DATA株式会社。植物の生体情報を計測・分析・活用するプラットフォームを提供し、トマトをはじめとする施設園芸の栽培管理を支える。写真は本プロジェクトの技術検証で、生産現場の映像に学習なしの物体検出モデルを適用した結果の一例。
01プロジェクト概要

プロジェクト概要

Client|クライアント
PLANT DATA株式会社
Project|プロジェクト
AI生育状況自動調査システムの構想・要求・要件定義〜画像解析技術の調査・PoC(実現可能性検証)〜次フェーズの技術課題整理
Industry|業界
アグリテック / 植物生体情報の計測・分析プラットフォーム
Service|支援領域
AI企画・要求・要件定義 / AI PoC・技術検証 / プロジェクトマネジメント
Period|支援期間
約2ヶ月(要求・要件定義〜技術検証報告)
Team|eap担当
株式会社eap(AI企画・要求・要件定義/プロジェクトマネジメント)。技術検証はeapと連携するAIエンジニアチームが実施
支援前の課題

トマトの生育調査は、葉の長さや果実数などを担当者が週に一度、テープメジャーと目視で計測する手作業で、計測できる個体数に限りがあり、収穫量の予測も担当者の経験と勘に依存していた。画像とAIで自動化する構想はあったが、何をAIで解くのか、どんなデータと技術が必要かが定まっていなかった。

eapのアプローチ

現行の調査業務を6つの計測項目に分解し、項目ごとに目的・技術的な課題・解決の方向性を整理してAIの要求・要件定義書にまとめた。撮影動画から計測値に至る処理を8つの技術要素に分け、先行研究と公開モデルを調査したうえで、生産現場の実データで仮検証を実施。結果を○△×で評価し、次フェーズの課題を整理した。

成果

生育調査の業務がAIの要件として言語化され、必要なデータ・撮影条件・アノテーション方針が定まった。8つの技術要素それぞれについて「現時点でできること」と「解決すべき課題」が、実データによる仮検証と先行研究の調査で明確になり、本開発(PoC・モデル開発)へ進むための技術的な見通しと論点が判断材料として揃った。

02プロジェクトの背景

経験と勘、そして人手に頼ってきたトマトの生育調査を、続けられる形に変える必要があった。

PLANT DATA株式会社は、植物の生体情報を計測・分析・活用するためのプラットフォームを提供する企業です。植物に触れずに光合成機能を評価するクロロフィル蛍光計測、光合成・蒸散のリアルタイム計測、作物の生育状況を週単位で可視化する生育スケルトンなど、「植物の声を聴く」ための計測技術を、愛媛大学の研究者と連携しながら事業化してきました。対象はトマトをはじめとする施設園芸の作物です。

トマトの生産現場では、収穫量の予測や栽培判断のために「生育調査」が行われています。葉の長さと幅、果実数と花数、葉の枚数、開花段の高さ、茎の太さ、伸長という6つの項目を、担当者が週に一度、テープメジャーと目視で計測する手作業です。1ヘクタール規模の圃場でも、人手で計測できるのは8〜32個体程度。この限られたサンプルと、積算温度や天気予報などの情報を組み合わせ、担当者が経験と勘で収穫量を予測しているのが実情で、予測の誤差は小さくありません。

誤差の影響は現場の外にも及びます。事前の販売契約では、契約量に収穫量が届かなければ採算を度外視してでも供給する義務が生じるため、生産者は控えめな量で契約を結ばざるを得ず、機会損失やフードロスにつながっています。手作業である以上、毎日実施できる業務量ではなく、調査漏れも起こり得ます。より多くの個体を継続的に計測できれば、収穫予測と栽培判断の精度を上げられる。同社はこの課題に対し、圃場を撮影した映像とAIモデルで生育調査そのものを自動化する構想を持っていました。ただし、「何をAIで解くのか」「どのようなデータと技術で実現できるのか」はまだ定まっていない。eapが参画したのは、この構想を要件と検証計画に落とし込む段階からです。

03課題

難しさは「画像で認識できるか」ではなく、認識した結果を現場が使う計測値に変換できるか。

ご相談の出発点は「生育調査をAIで自動化したい」でした。画像から果実や葉を認識するAIには、すでに多くの研究や実装があります。しかし要件を整理していくと、このプロジェクトの難しさは「認識できるか」ではないことが分かってきました。

現場が必要としているのは、「ここに葉がある」という認識結果ではなく、「その葉は何cmか」「開花段はどの高さか」「今週、新しく着果した果実は何個か」という計測値です。密集した植物体のなかで個々の葉を分離し、葉の先端と根元を特定し、画像上の長さを実際の寸法に換算する。花房と果房を区別し、上から数えて何段目かを判定する。つり下ろし作業の前後で高さの基準が変わっても、伸長を追い続ける。撮影は夜間で、可視光とクロロフィル蛍光の2種類の映像があり、カメラの高さによっては植物体が画角に収まらないこともある。しかも、学習に使えるアノテーション済みデータは存在しませんでした。認識と計測のあいだにあるこの距離を、どの技術でどこまで埋められるのかを見極めることが、本質的な課題でした。

Before ─ 支援前
経験と勘、手作業に依存した生育調査
週に一度の手計測で得られる少数のサンプルと担当者の経験で収穫量を予測。計測に時間がかかるため頻度も個体数も増やせず、調査漏れのリスクもあった。AIで自動化する構想はあったが、要件は未定義だった。
Bottleneck ─ 本質的なボトルネック
「認識」と「計測」のあいだにある技術的な距離
画像から葉や果実を見つけることと、現場が使うcm単位の計測値や段ごとの個数を出すことは別の問題。密集した植物体の分離、実寸への換算、段の判定、撮影条件のばらつき、学習データの不在といった論点が未整理のままだった。
To-Be ─ 目指す状態
何をAIで解くかが定まり、実現可能性が実データで見えている状態
調査業務をAIの要件として言語化し、必要なデータ・撮影条件・技術方式を定義する。そのうえで主要な技術要素を実データで検証し、「できること」と「次に解くべき課題」を明確にして、本開発に進むかどうかを判断できる材料を揃えることをゴールに置いた。
04アプローチ

AIから入らず、現場の調査業務を分解し、何をAIで解くのかを先に決める。

eapが最初に行ったのは、AIモデルの選定ではなく、現場で行われている生育調査業務の分解でした。6つの計測項目それぞれについて、何のために測っているのか、どの部位をどう測っているのか、その値が収穫予測や栽培判断のどこに使われるのかを、先行して行われていた要件調査の結果や生産者の声も引き継ぎながら整理しました。

そのうえで、プロジェクト全体を「①プロダクトの要件定義」「②モデル開発・検証」「③プロダクション」の3フェーズで設計し、本フェーズは①と②の前半、すなわち要求・要件の確定と、開発内容を決めるための技術検証と位置付けました。実現可能性を早い段階で見極め、必要であれば別の課題や解決策に方向転換できるようにする。リアルタイム性や規模より、まず「実用に耐える形で成立するか」を確認することを優先しています。

STEP 01
現行の生育調査業務を分解する
葉の長さと幅、果実数と花数、葉の枚数、開花段の高さ、茎の太さ、伸長の6項目について、計測の目的(LAIの算出、生育バランスの把握、週間の新規着果数から出荷予測・摘果計画への反映、樹勢の把握、栽培環境の最適化、つり下ろし作業の作業強度の把握など)と現場の計測方法を整理。生育調査、LAI、樹勢、ずらし作業、葉かき、摘果といった用語の定義から揃えた。
STEP 02
AIの要求・要件を定義する
項目ごとに「画像から取得すべき情報」「技術的な課題」「解決の方向性」「生産者側の許容条件」を一覧化。たとえば葉の長さは、特定の1枚を狙うのではなく茎頂から4段目までの各葉を計測し、幅は長さからの換算で代替する。果実・花は成熟度を問わず、高さ×個数のヒストグラムとして扱う。開花段の高さは統計処理で代替する。現場が「今の計測値との差が理解できれば問題ない」とする条件を要件に織り込み、AI要求・要件定義書としてまとめた。
STEP 03
必要なデータと撮影条件を整理する
生産現場のレール上を移動するカメラで夜間に撮影された動画(可視光とクロロフィル蛍光の2種類、カメラ高さ別)の構造と内容を確認し、検証に使うデータを選定。学習に使える既存のアノテーションが物体検出・キーポイント・セグメンテーションのいずれにも存在しないことを確認し、公開されているトマト画像データセット十数件の内容と商用利用可否を調査した。
STEP 04
画像解析の手法を調査する
動画から計測値に至る処理を、パノラマ化、デプス推定、距離キャリブレーション、処理対象以外の除外、キーポイント抽出、物体検出、セグメンテーション、後処理の8段階に分解。段階ごとに先行研究と公開モデルを調査し、データ準備と実装のコストが低い少数データ学習(few-shot)・学習不要(zero-shot)のモデルを中心に候補を絞り込んだ。
STEP 05
実データでPoC(仮検証)を行う
AIエンジニアチームが、選定した手法を生産現場の実データに適用。パノラマ化、単眼デプス推定、距離キャリブレーション、処理対象以外の除外、物体検出(クリップ・葉・果実)、セグメンテーション(茎・枝・葉・果実・クリップ)について、要件定義のための仮実装と結果の確認を行った。キーポイント抽出はアノテーションと適合モデルが無く、先行研究の調査にとどめた。eapは検証項目の設計、スケジュールと進捗の管理、結果の整理を担った。
STEP 06
結果を評価し、課題を明確にする
8つの検証項目それぞれについて、目的、実施結果(○△×)、明らかになった課題を一覧に整理。「検出はできたが不完全」「解像度が不足」「アノテーションがなく未検証」といった状態を、良し悪しではなく、次に何をすべきかが分かる形で記述した。
STEP 07
次フェーズの技術課題と進め方を整理する
アノテーションの全体像(定義、種類、6段階のプロセス、体制、ツール選定)と、物体検出・キーポイント・セグメンテーション各方式のアノテーションマニュアルを整備。モデルの再学習、より高品質なデプス推定モデルの検証、パノラマ化の改善策など、本開発に向けて解くべき課題を成果報告書にまとめた。
05技術検証

撮影した動画から計測値に至る処理を8つの技術に分け、実データで一つずつ確かめる。

撮影した動画から、現場が使う計測値に至るまでの処理は、一つのAIモデルで完結するものではありません。eapは処理の流れを8つの技術要素に分け、それぞれ「何を実現するための技術か」「今回何を検証したか」「何が分かったか」を整理しました。検証の実装はAIエンジニアチームが担い、eapは検証項目の設計と結果の評価・整理を担っています。

01パノラマ化レール上を横に移動しながら撮影した動画を、1枚の大きな画像につなぎ合わせる技術。後続の処理を行いやすくするために必要になる。今回はOpenCVの画像合成モジュールで横方向のつなぎ合わせを検証。5秒分程度までは合成できたが、フレーム間の変化が大きいためにぶれが生じ、本来1つの果実が2つに見えるといった課題が確認された。カメラと対象との距離が近いことが原因と考えられ、色付き動画の利用、縦方向の合成、別手法との比較が次の検討事項となった。
02デプス推定1枚の画像から、各ピクセルがカメラからどれだけ離れているか(奥行き)を推定する技術。画像上の長さを実寸に換算するため、また処理対象の手前・奥を区別するために必要になる。今回は公開されている単眼デプス推定モデルで検証し、手前と奥のおおまかな区別はできたものの、後続の処理に必要な解像度には達していなかった。より新しいモデルや、横移動の撮影を活かしたステレオ方式での精度向上が今後の課題として整理された。
03距離キャリブレーションデプス推定で得られる相対的な奥行きを、実際の距離(cm)に変換する処理。葉の長さや茎の太さなど、すべての計測項目の土台になる。調査の結果、最小二乗法で補正できることが分かり、その方式で検証した。画像内の任意の2点間の距離をどのように測り、どう評価するかは、次フェーズで詰めるべき論点として残った。
04処理対象以外の除外撮影対象の株の奥に写り込む別の株など、計測対象ではないものを取り除く処理。今回はデプス情報に閾値を設けて奥のものを除外する方法を検証。手法としては動作したが、デプスの精度が足りず、奥の植物が一部しか消えない一方で対象の一部が消えてしまう結果となった。デプス推定の精度向上と閾値の調整が課題となる。
05植物のキーポイント抽出人の骨格推定のように、茎頂、葉の節、葉の先端といった植物の特徴点を抽出し、植物の構造を捉える技術。葉の長さや開花段の高さの計測に直結する。植物のような非人体のキーポイント抽出は、データ準備と精度評価の難しさから難易度が高いことが知られている。今回はアノテーション済みデータがなく、少数データで学習できる公開モデルも見つからなかったため、先行研究と候補モデルの調査にとどめ、検証は次フェーズに送ることを明確にした。
06物体検出(Object Detection)画像のなかから果実、葉、誘引用のクリップなどの位置を四角い枠で特定する技術。果実数・花数のカウントや、茎の太さを測る位置の特定に使う。今回は学習なしで検出できるモデル(zero-shot)を用い、果実、葉、クリップの検出を試した。果実はある程度検出できた一方、葉とクリップは検出が不完全で、少数の画像で学習させた別モデルでは対象を予測できなかった。生産現場の画像で再学習することが次のステップとなる。
07セグメンテーション画像のなかで茎、枝、葉、果実、クリップといった部位の領域をピクセル単位で塗り分ける技術。茎の太さや葉の面積の計測に必要になる。今回は施設内の動画から抽出した5枚の画像に茎・枝・葉・果実・クリップのアノテーションを行い、少数データで学習できる公開モデルで、アノテーションしていない画像に対する領域予測を検証。茎と葉の領域はおおむね予測できたが、茎と枝の領域が重なる箇所や、クリップと果実を予測できない課題が確認された。アノテーションを増やして再学習すること、枝と茎の境界を栽培の専門家と定義することが次の課題となった。
08後処理(計測値への変換)※本フェーズの検証対象外以上の結果を組み合わせ、葉の長さ・幅、果実数と花数、葉の枚数、開花段の高さ、茎の太さ、伸長という6つの計測値に変換する最終段階。本フェーズでは、この処理に必要な前段の技術要素の見通しを立てることに集中し、計測値ごとの処理の仮検証と評価方法の設計は次フェーズの計画に組み込んだ。
06支援アウトプット

業務をAIの要件に翻訳し、検証の結果を次の判断に使える形で残す。

「AIで自動化する」で終わらせず、業務を要件に翻訳し、検証の結果を次の判断に使える形で残す。

ここでは、実際のプロジェクトで作成した支援アウトプットの一部をご紹介しています。機密情報・取引先名・個人名等を除き、公開用に再編集しています。

支援アウトプット01 生育調査業務のAI要件化。葉の長さと幅、果実数と花数、葉の枚数、開花段の高さ、茎の太さ、伸長の6項目について、計測の目的、画像から取得する情報と技術課題、解決の方向性、現場の許容条件を一覧にしたスライド。
01 生育調査業務のAI要件化|6つの計測項目を、目的・画像から取得する情報・技術課題・解決の方向性・現場の許容条件に分解。「何をAIで解くのか」を先に決めました。
支援アウトプット02 処理の全体像と検証スコープ。パノラマ化からデプス推定、距離キャリブレーション、処理対象以外の除外、キーポイント抽出、物体検出、セグメンテーション、後処理までの8段階と、プロジェクト全体の3フェーズにおける本フェーズの位置付け、検証の進め方を示したスライド。
02 処理の全体像と検証スコープ|動画から計測値に至る処理を8段階に分け、プロジェクト3フェーズのなかで本フェーズが確かめる範囲と進め方を定義しました。
支援アウトプット03 技術検証の結果サマリー。8つの検証項目それぞれの目的、実施結果(○△×)、明らかになった課題、次の打ち手を一覧にしたスライド。
03 技術検証の結果サマリー|8項目の目的・結果・課題・次の打ち手を一覧化。△や×も含めて、次フェーズで解くべきことが分かる形で整理しています。
支援アウトプット04 データ・アノテーション設計。夜間にレール上を移動するカメラで撮影された可視光・クロロフィル蛍光・高さ別の動画データの構造、物体検出・キーポイント・セグメンテーションの3方式と対象部位、アノテーションの6段階プロセスと3つの役割を示したスライド。
04 データ・アノテーション設計|撮影データの構造と、物体検出・キーポイント・セグメンテーションの3方式について、アノテーションの対象・プロセス・体制・ツール選定を整理しました。

実データによる検証結果(一部)。うまくいった箇所も、課題が残った箇所も、そのまま次の判断材料にする。

以下は、本プロジェクトの技術検証で生産現場の映像に各手法を適用した結果の一部です。成果報告書の掲載画像を公開用に再構成しています。

検証結果 物体検出。夜間の施設内で撮影したトマトの入力画像と、学習なしの物体検出モデルによるクリップの検出、葉の検出、果実の検出の結果。検出された位置に枠と信頼度が表示されている。
検証結果 物体検出|学習なしのモデルで果実・葉・クリップの検出を試行。果実はある程度検出できた一方、葉とクリップは不完全で、生産現場の画像で再学習する必要性が明確になりました。
検証結果 セグメンテーション。トマトの入力画像2枚と、5枚のアノテーション画像で学習したモデルが予測した茎・枝・葉・果実の領域マスク。
検証結果 セグメンテーション|5枚のアノテーション画像で学習したモデルが、未知の画像で茎・枝・葉の領域を予測。茎と枝の重なり、クリップ・果実の未検出が課題として確認できました。
検証結果 デプス推定と処理対象の除外。クロロフィル蛍光で撮影した元画像、単眼デプス推定モデルが出力した奥行きの推定画像、デプスの閾値で奥の株を除外した結果。
検証結果 デプス推定と処理対象の除外|単眼デプス推定で手前・奥を推定し、閾値で奥の株を除外。解像度不足で除外が不完全であることが分かり、精度向上が次の課題になりました。
検証結果 パノラマ化。クロロフィル蛍光で撮影した動画を5フレームと10フレームでつなぎ合わせたパノラマ画像。10フレームの結果では果実がぶれて二重に見える箇所がある。
検証結果 パノラマ化|クロロフィル蛍光で撮影した動画をつなぎ合わせた結果。約5秒分までは合成できたが、フレーム間の変化が大きくぶれが生じ、1つの果実が2つに見える箇所が確認されました。
07検証結果の整理

8項目の多くは「課題あり」。それ自体が、次フェーズへ進むための判断材料になった。

検証の目的は、うまくいくことを示すことではなく、本開発に進む前に「どこに、どれだけの技術課題があるか」を実データで把握することでした。8項目の結果を、それぞれの目的と併せて一覧にしています。

パノラマ化
目的 動画を1枚の画像に △ 5秒分まで・二重像
デプス推定
目的 奥行きを推定する △ 解像度が不足
距離キャリブレーション
目的 奥行きをcmに換算 △ 測り方・評価が未確定
処理対象以外の除外
目的 奥の株を取り除く ○△ 動作するが精度不足
キーポイント抽出
目的 特徴点から長さを測る × 前提不足で未検証
物体検出
目的 果実・葉・クリップの位置 △ 果実は可、葉は不完全
セグメンテーション
目的 部位の領域を塗り分け △ 予測可・細部に課題
クリップの検出
目的 計測位置の目印を検出 △ 一部のみ・再学習要
○=目的を達成/△=動作は確認したが精度・範囲に課題/×=前提が揃わず未検証。評価は本プロジェクトの成果報告書にもとづきます(処理対象以外の除外は、報告書の一覧で○・本文で精度不足とされていたため両方を表記)。各項目の詳細は「05 技術検証」と支援アウトプット03をご覧ください。多くの項目が△であることは、この段階では想定内です。何が足りないか(解像度、学習データ、撮影距離)が具体的に分かったことで、次フェーズで「データを何枚、どう用意するか」「どのモデルをどう学習させるか」を計画できる状態になりました。
08成果

完成したシステムではなく、本開発へ進むための技術的な見通しと論点が残った。

本フェーズの成果は、動くシステムではありません。人の手で行われてきた生育調査がAIの要件として言語化され、必要なデータと技術が特定され、主要な技術要素の実現可能性と課題が実データで確認されたこと。つまり、本開発に投資するかどうか、するなら何から着手するかを判断できる材料が揃ったことです。

RESULT 01
現場業務がAIの要件に翻訳された

6つの計測項目それぞれについて、計測の目的、画像から取得すべき情報、技術的な課題、解決の方向性、生産者側の許容条件が一覧化され、AI要求・要件定義書としてまとまりました。「特定の1枚ではなく茎頂から4段目までの葉を測る」「果実は高さ別のヒストグラムとして扱う」「開花段の高さは統計処理で代替する」など、AIで解きやすい形に業務を置き換える判断が、要件として残っています。

RESULT 02
必要なデータ・撮影条件・アノテーション方針が定まった

可視光とクロロフィル蛍光、カメラ高さ別という撮影データの構造が整理され、学習用アノテーションが存在しないという前提が明確になりました。公開データセットの調査を経て、物体検出・キーポイント・セグメンテーションの3方式について、アノテーションの定義、6段階のプロセス、アノテーター・レビュアー・プロジェクトマネージャーの体制、ツールの選定理由、作業者向け・レビュアー向けのマニュアルまで整備されています。

RESULT 03
8つの技術要素の「できること」と「課題」が明確になった

パノラマ化、デプス推定、距離キャリブレーション、処理対象以外の除外、キーポイント抽出、物体検出、セグメンテーション、クリップ検出のそれぞれについて、目的・実施結果・課題が整理されました。キーポイント抽出は前提が揃わず先行研究の調査にとどめ、それ以外は実データで仮検証しています。多くの項目は△ですが、その理由(解像度不足、学習データ不足、撮影距離)が特定されており、次に何を改善すべきかが分かる状態になっています。

RESULT 04
本開発へ進むための技術的な見通しと論点が揃った

モデルの再学習、より高品質なデプス推定やステレオ方式の検証、パノラマ化の改善策、キーポイント定義とアノテーションの開始、枝と茎の境界定義といった次フェーズの課題が成果報告書に整理されました。PoCから処理ロジックとモデルの改善へ進むための計画の土台が、判断材料として残っています。

6項目
生育調査の計測項目をAIの要求・要件として定義
8技術
調査・仮検証の対象とした画像解析の技術要素(うちキーポイント抽出は先行研究の調査のみ)
3方式
アノテーション設計とマニュアルを整備した学習データの作成方式(物体検出・キーポイント・セグメンテーション)

※ 項目数・技術要素数・方式数は、本プロジェクトのAI要求・要件定義書および成果報告書にもとづく実数です。収穫予測精度や作業時間の改善といった定量成果は、本フェーズが要件定義・技術検証の段階であるため発生しておらず、掲載していません。

  • 「AIで自動化する」から入らず、現場の生育調査業務を6項目に分解し、目的と計測方法から整理した。
  • 画像で「認識できること」と現場が使う「計測値」の距離を課題の中心に置き、処理を8つの技術要素に分けて検証計画を設計した。
  • 学習データが存在しないという前提を早期に確認し、少数データ・学習不要のモデルを中心に候補を絞ることで、短期間で実現可能性の見通しを得た。
  • うまくいかなかった検証も隠さず、原因と次の打ち手まで整理して報告した。
  • アノテーションの設計とマニュアルまで整備し、次フェーズにそのまま着手できる状態を残した。
09クライアントの声

AIモデルをつくることではなく、栽培現場で取得したい情報から逆算し、必要なデータと技術的な課題まで整理できた。

「単にAIモデルをつくることが目的ではなく、実際の栽培現場で取得したい情報から逆算し、必要なデータや撮影方法、技術的な課題まで整理できたことは、今後の開発を進めるうえで大きな前進になったと感じています。」

これまで農業の現場では、生育状況の把握や収穫量の予測など、人の目や経験に依存する部分が多くありました。

今回のプロジェクトでは、生育調査という現場業務をどのように画像やAIによってデータ化・自動化できるのか、要件整理から技術検証まで一緒に進めていただきました。

単にAIモデルをつくることが目的ではなく、実際の栽培現場で取得したい情報から逆算し、必要なデータや撮影方法、技術的な課題まで整理できたことは、今後の開発を進めるうえで大きな前進になったと感じています。

複数の画像解析技術を実データで検証することで、実現可能な部分と今後さらに検討が必要な部分を具体的に把握することができました。

PLANT DATA株式会社
代表取締役CEO
北川 寛人 様
10プロジェクトの裏側

AI開発の成否は、モデルより先に「何を解くか」の定義で決まる。

株式会社eap ─ Project Lead
黒崎 勇也
プロフィール →

モデルの前に、「何を解くか」を決める

AI開発のご相談は、「このモデルで何ができますか」から始まることが少なくありません。しかしeapは、最初にモデルの話をしません。現場で誰が、何のために、何をどう測っているのか。その値が、収穫予測や栽培判断のどこに使われているのか。ここが整理されていないと、精度の高いモデルができても現場で使えない、という結果になります。

今回も、6つの計測項目を一つずつ分解し、「AIで解きやすい形に業務を置き換えられないか」を生産者の許容条件と照らし合わせながら要件にしました。特定の1枚の葉を探すのではなく茎頂から数段分を測る、開花段の高さは統計的に扱う。こうした置き換えの判断こそ、要件定義の中身です。

うまくいかない検証は、失敗ではなく判断材料

8項目のうち多くが△、1項目は未検証という結果を、そのまま報告しています。PoCの目的は成功を示すことではなく、本開発に進む前に技術的なリスクを可視化することだからです。「解像度が足りない」「学習データがない」「カメラが近すぎる」と原因まで特定できていれば、次フェーズでやるべきことは明確になります。

逆に、この段階で結果を良く見せてしまうと、本開発で行き詰まったときのコストは桁違いに大きくなります。eapが要件定義とPoCを本開発から切り分けて設計するのは、このためです。

コンサルティングとエンジニアリングを、同じテーブルで

本プロジェクトでは、eapがAI企画・要求・要件定義・プロジェクトマネジメントを担い、技術検証はAIエンジニアチームと連携して進めました。業務側の要件と技術側の制約を同じテーブルで突き合わせ、「この項目は統計処理で代替できるか」「この精度で現場は使えるか」を都度判断する。この往復があることで、要件は机上のものにならず、検証は目的を見失いません。

eapのAI支援は、モデルを作って納品することではなく、事業と現場の課題から逆算してAIの要件を定め、実データで実現可能性を確かめ、投資判断の材料を揃えるところまでを一体で行います。

11今後の展望

アノテーションとモデル学習へ。次フェーズで解くべき課題は特定されている。

本フェーズで整理された次の課題は明確です。キーポイントの定義を定めてアノテーションを開始すること。生産現場の画像で物体検出モデルを再学習し、セグメンテーションモデルはアノテーションを増やして精度を上げること。より高品質なデプス推定モデルやステレオ方式を試し、距離の測り方と評価方法を確定すること。パノラマ化は色付き動画や縦方向の合成、別手法との比較で改善を図ること。そして、枝と茎の境界のように定義が必要な事項は、栽培の専門家と連携して決めていくこと。

これらは成果報告書に「今後の検討事項」として整理され、PoCの実施から処理ロジックとモデルの改善へ進むための計画の土台になっています。eapのAI支援は、「AIで何ができるか」がまだ見えていない構想段階からご相談いただけます。現場の業務を要件に翻訳し、実データで確かめ、投資判断の材料を揃える。この進め方は、農業に限らず、人の目と経験に頼る計測・判定業務を抱える現場に共通するものです。

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この事例と同じように、貴社でもまず「いまの事業がどう動いているか」の整理から始めます。受託前提ではなく、課題が固まっていない段階のご相談で構いません。

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